[源氏物語あらすじ]第三巻「空蝉」

投稿日:2018-02-03 更新日:

【光源氏と空蝉それぞれの想い】

 

眠れない光源氏は、隣で寝ている空蝉の弟である小君に恨み言を言う。

思わず涙を流しながら聞いている小君を可愛いと思いながら、空蝉のほっそりとした体つきやあまり長くなかった髪の手触りなどが小君と似ていると感じ、しみじみといとしさを募らせる。

空蝉のほうも源氏を冷たく拒絶したことに心を痛めており、それきり彼からの手紙が途絶えたことを辛く悲しく思っていた。

それでも「こんな秘か事は打ち切ってしまわなければ」と考えるのであった。

 

【小君、幼いながらも源氏のために奮闘する】

 

あるとき紀伊の守が任国に出かけ、留守宅には女たちだけが残る日があった。

小君は敬愛する源氏をなんとか姉の空蝉に会わせて差し上げたく思い夕闇に紛れて手引する。

姉の元に入っていった小君が格子を開けたままにしていたので、源氏のいる場所からも部屋の奥まですっかり見える。

 

【源氏、碁を打つふたりの女性を垣間見する】

 

室内では空蝉と軒端荻(空蝉の夫伊予の介の亡くなった先妻の娘。紀伊の守の妹)が碁を打っていた。

灯りのある明るい場所で初めてはっきり見る愛しい女 空蝉は、華奢で小柄で、目は腫れぼったく、鼻筋も通っておらず、老けた感じで、美人ではない。

一方軒端荻は若々しく愛嬌があって豊満で、華やかな美人である。

しかし身のこなしの面では、空蝉は碁石を置くときに腕があらわにならぬよう気を付けたり、顔を隠したり、口元を覆ったり、慎み深く素晴らしい。

軒端荻は落ち着きがなく、暑いからと着物を胸元までくつろげていて、はしたないと思う。

 

【再び侵入する源氏・薄衣を置いて逃げる空蝉・人違いされる軒端荻】

 

屋敷の人間たちが寝静まったころ、小君は空蝉の元に源氏を手引する。

そのとき空蝉は源氏とのあの夢を見ていたような妖しい一夜を思い出し眠れずにいた。

軒端荻は継母である空蝉の傍らで無邪気に眠っている。

そこへ人の忍び入ってくる気配がして、芳しい香の匂いが漂ってきた。

覚えのある香りに空蝉ははっとする。

そしてそっと身を起こすと、薄い単衣一枚だけを羽織って寝所からすべり出る。

女がひとり眠っているのを暗がりで見た源氏はほっとする。

寄り添って横になると、この前よりも豊満な感じがする。

ぐっすり眠って目を覚まさないのも、思慮深かったあの人にしてはおかしいと思う。

ようやく別人だったかと気付くと、あまりのことに情けなくいまいましくてならない。

とはいえ、「人違いだったと慌てるのも間抜けな話だし、この女が先ほど見た可愛かった女なら、まあそれも良いだろう」と思いなおす。

目を覚ました軒端荻が呆然としているのを「これまで方違えにかこつけてこの屋敷を訪れていたのも、実はあなたが目当てだったのですよ」などと上手く取り繕って話す。

男を知らないのに初々しさに欠け、恥じらいうろたえる様子も見せない彼女に、源氏は却って慎み深い空蝉のことが忘れられぬ思いがするのだった。

 

【源氏、空蝉の脱ぎ捨てていった薄衣の小袿を持ち帰り恨む】

 

源氏は軒端荻に調子よく優しく口止めをして、空蝉の残していった薄衣の小袿を手に取って自室に戻る。

小君を起こして二条院に帰ると、「お前は役に立たないね、可愛げのない空蝉の弟だと思うとお前をいつまでも可愛がってやれそうもないよ」と恨み言を並べる。

そして硯を引き寄せて、懐紙にさりげなく手習いのように歌を書き流す。

ー 空蝉の身をかへてける木の下に
なほ人がらのなつかしきかな ー

蝉の抜けがらだけを残し去ってしまった人よ、身の内の人がらこそを慕っていたのに

それを小君は懐にしまい、空蝉に届ける。

待ち受けていた空蝉は小君を叱りつけ、あちらでもこちらでも叱られてばかりの小君はやりきれない気持ちだ。

軒端荻はうろちょろする小君を見て、もしや源氏の君からお手紙があるのではと気になって仕方ないが、恋人からの文は届かない。

空蝉は文を読んで、「もしこれが夫のいない娘の頃だったなら」と過ぎ去った昔を取り返しようもないままに、もらったその文の端に人知れず書き付ける。

空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのびに濡るる袖かな

薄い空蝉の羽に置く露が木に隠れて見えないように、私も人目を忍んであなたへの恋の切なさに泣いております

 

超個人的感想

 

相手を「中流の女だから」と蔑視している光源氏の空蝉への言動は結構ひどい。

「中流なのに私を拒むのか」という気持ち、現代の私たちには感じが悪いけれど、そう考えるのも当然の時代。

もちろん、当時の読者にとっても当然の考え方だ。

そのうえ「私が独身だったら、源氏の君の愛に応えられたのに」という、本当は源氏を好きだという空蝉の気持ちも描かれている。紫式部は絶対に光源氏を「ただの格好悪い男」にはしない。

紫式部は物語中、一貫して「とにかく光源氏は素晴らしい人だ!」と褒め続ける。

身分が高く教養もあって輝くように美しく芸達者な風流人。

でも私には聞こえる。その光源氏を狂わせるほど「女性たちが魅力的であること」。

源氏を褒めれば褒めるほど、「そんな源氏がこういう女性たちに夢中になりました」と強調される。

長い長い物語の間、一度もブレない軸。

源氏を讃えたからこそ、当時の「物語なんて、女子供の読み物だろ」という風潮の中、男性の読者も取り込むことができたのだろう。

女性が男性に劣った生き物ではないという一貫した紫式部の主張。

『源氏物語』は紫式部の思想を世間に広めるための手段といっても過言ではないと私は思っているというのも、そのうちガッツリ書きたい。

ちなみにこの巻前後の連続する3巻「帚木」「空蝉」「夕顔」は「帚木三帖」と呼ばれ、1巻の「桐壺」と5巻の「若紫」との繋がりがちょっと不自然な、独立してよくまとまった3巻。

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